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湧き水あふれるせせらぎの里<豊岡市日高町十戸>(Vol.44/2002年7月発行)

さらさら、ぷくぷく、きらめく水音
県内随一といわれる豊かな清水が
ニジマスやワサビを育む

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湧き水あふれるせせらぎの里<豊岡市日高町十戸>

 国道482号線、神鍋高原へ向かう稲葉川のほぼ中間地点、日高町十戸を歩く。十戸の清水は、神鍋高原に降る雨や雪解け水が、約2万年から3千年前の間に神鍋火山群の噴火によってできた溶岩の断層をくぐって湧き出る伏流水で、主に大池、中の池、小池、堂の川と十戸滝の5ヶ所から湧出している。測量が可能な大池、中の池、小池からは1秒間に600〜700リットル、ドラム缶約3本もの水が絶えず湧き出し、県内随一といわれる水量を誇っている。水温は11〜13度、清水の恵みを活かして、ワサビの栽培やニジマスなどの養殖がおこなわれ、豊かでおいしい水は日高町の上水道にも利用されている。
 ワサビ栽培の歴史は古く、約280年前の享保年間に領主に献納したと伝えられている。ワサビは通常、海抜200メートル以上の涼しい清流にしか育成しないが、十戸は海抜約100メートル、日本一海抜の低い場所での栽培といわれている。湧水地の一つ、小池の水源付近にワサビ田があり、種の採取、春と秋の播種、育苗、定植と、収穫までの2年間、手間と労力をかけた栽培を繰り返している。出荷先は主に大阪市場、肥料などを加えることなく、湧き水だけで栽培しているのも自慢だ。
 養鱒業は、大正12年頃から円山川で捕獲した鮭の卵を採取し、ふ化育成に取り組んだことにはじまり、ニジマスの養殖は昭和初期からおこなわれるようになった。高級魚として珍重され、一時期は海外へも盛んに輸出された。最も需要が多かったのは昭和45年頃だが、その後は、技術向上に取り組み、自然界では年1回しかしない産卵も春や夏にも自家採卵を可能にした。現在、7軒が養鱒業に携わり、年間生産量は約40トン、釣り堀用やキャンプの食材として出荷している。ニジマスの他にもイワナ、アマゴなど清流にしか生息しない魚の養殖もおこなっている。
 国道沿いは、昭和40年頃にニジマスの川釣り場が開設されたのをきっかけに大盛況となり、旅館や飲食店が建つ、にぎやかな町並みができ上がった。その一方、集落の中に入り込むと、民家を縫うように清らかな水路が流れ、のどかでゆったりとした風景がひろがる。野菜を洗ったりする生活用水、昔ながらの川いとも健在。コンクリートで固められた表情ではなく、苔むした石垣、砂利の川底に水草が自生し、豊かな水量は流れが速くよどみがない。水辺の風情がなんとも良い。
 十戸を歩くとさまざまな水音に出会う。滝や渓流の近くでは、ドウドウと響く川音、養殖池では、時折、ぴちゃんとニジマスが跳ねる音、ワサビ田ではぷくぷく湧き出る水の音、水路では、さらさら、きらめくような水音が奏でられる。
 夏には、清流にのみ繁殖するキンポウゲ科の多年草、梅花藻の白い可憐な花もゆらめいている。
※記事の内容は2002年7月掲載当時のものです。

中の池の湧水地周辺

のどかでゆったりとした風景がひろがる。

堂の川

国道からわずか数メートル入った民家の軒先にある湧水地、堂の川。冷たくて旨い。

野菜などを洗う現役の川いと

夏はスイカやビールを冷やすことも。

水量が豊かで流れも早い。藻の緑も鮮やか。

ワサビ栽培

足元からぷくぷく湧き水の音がする。

ニジマス

人影にニジマスが寄ってくることも。池の表面がざわざわ波立つさまは圧巻。

だんごの粉屋さん

但馬各地から多くの人が訪れる評判のだんごの粉屋さん。ウオンウオンと大きなベルトが回り石臼で粉を挽く。かつては水車が使われていた。

清らかな水路

国道から入ると民家を縫うように清らかな水路が流れる。