»一覧ページへ戻る

ひなびた温泉町・七釜温泉を歩く<新温泉町七釜>(Vol.77/2011年1月発行)

泉質のよい温泉がとうとうと湧き出る七釜温泉
温泉にまつわるお地蔵さんや素朴な自然…
こたついらずの温泉へ湯治旅に出かけよう!

ひなびた温泉町・七釜温泉を歩く<新温泉町七釜>(Vol.77/2011年1月発行) マップを拡大して見る

ひなびた温泉町・七釜温泉を歩く<新温泉町七釜>

 ひなびた温泉地として知られる新温泉町の七釜温泉。昭和33年に旧浜坂町で初めて発見された温泉である。浜坂温泉郷(七釜温泉・ 二日市温泉・ 浜坂温泉)と呼ばれる3つの温泉地のひとつだ。
 泉質はナトリウムやカルシウムを含んだ硫酸塩高温泉で、傷の治癒効果が高く、集落内には温泉病院がある。保温効果も高いことから「こたついらずの温泉」と呼ばれて親しまれてきた。兵庫県内で唯一「国民保養温泉地」の指定を受けている。温度も約50度と適温なので、贅沢な源泉かけ流しの湯を堪能できることが自慢だ。
 七釜の地名の由来は諸説ありはっきりとしていない。昔、入り江になっていたこの地の海岸で塩を炊いた釜が7つあったことや、点在する墳墓が釜のように見えたからともいわれている。
 また、水の湧く所を「釜」と呼ぶところから、温泉の湧出によって「釜」という文字が付けられたという説もある。いずれにしても地元の人にとって「釜」はシンボルとなっていて、 外湯施設の「ゆ〜らく館」には直径が約1・5メートルもある「釜風呂」が設置されている。
 そんな隠れた名湯が湧き出る七釜には、温泉にまつわる名所が点在している。第三源泉の前に佇む「おかげ地蔵」は、病気治癒のお礼参りに訪れる人が多いお地蔵さん。その昔ここに住まいがあり、幽霊が出たので、地蔵をまつって鎮めたといわれている。
 さらに集落から外れた杉木立の中には「子授かり地蔵」が鎮座。文政5年(1822)に当地の地主が建立したと伝わり、その後、温泉宿に泊まった女性が「子が授かりますように」と願うと、本当に子が授かったという逸話が残されている。七釜では14軒の温泉宿が営業しており、今でもその噂を聞きつけ、宿に泊まりにくるお客さんもいるそうだ。
 集落内には家々の間をぬって小さな路地がたくさんあり、至る所に水路が張り巡らされている。玄関先には野菜を洗ったり、洗濯をしたりする洗い場「川いと」も残されており、とても風情がある。
 冬場は近くの浜坂漁港で水揚げされる松葉ガニと温泉を目当てに多くの人が訪れる七釜温泉。素朴な佇まいが今も残るこの場所に、湯治旅へと出かけてみてはいかがだろうか。

玉田禅寺

臨済宗の名刹である退耕山・玉田禅寺は、室町時代に開基したと伝わる。本堂裏には約400年前に造られた「築山式枯山水」の庭園がある。裏山を借景として、岩盤を削った所に自然と生えた杉苔がとても美しい。縁側から望む景色はまるで一幅の絵画のようで、心を鎮めてくれる。

山宮神社

115段の階段を昇った高台にある山宮神社は、集落の氏神様。毎年、秋祭りでは郷土芸能であり、町指定無形民俗文化財の「七釜麒麟獅子舞」が奉納される。

六地蔵

七釜にはお地蔵さんが多い。子どもが授かったという秘話が残る「子授かり地蔵(右)」や、病気平癒の願いを込めた「おかげ地蔵」は温泉とのゆかりが深い。玉田禅寺前には「六地蔵」があり、本尊も安産を守護する「地蔵菩薩」がまつられている。

温泉タンク前にある温泉源

かつてはここで洗い物をする人もいたのだとか。

七釜温泉「ゆ〜らく館」

平成17年にオープンした七釜温泉の外湯施設「ゆ〜らく館」。加水は一切しておらず、源泉を贅沢にかけ流しで満喫できる。特に七釜の地名に由来する大釜の浴槽が人気!

川いと

家々の間をぬっていくつもの水路が張り巡らされている。家の玄関先や裏口には「川いと」も見られ、川が人々の生活と密着していたことをうかがえる。