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応挙寺の門前町を歩く<香美町香住区森>(Vol.119/2022年10月発行)

円山応挙ゆかりの大乗寺の門前町。
川いとや黒壁の旧家など
歴史の面影を辿りながら応挙の散歩道を歩く。

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応挙寺の門前町を歩く<香美町香住区森>

 江戸時代に活躍した絵師・円山応挙ゆかりの寺として有名な「大乗寺」。応挙とその一門の手による障壁画が描かれていることから別名「応挙寺」と呼ばれ親しまれている。
 応挙は享保18年(1733)に現在の京都府亀岡市で農家の次男として生まれる。絵の勉強のため京都で苦学をしていたところ、当時の大乗寺住職・密蔵上人が才能を見込んで学資を援助したことがあった。画壇の頂点へと登りつめた応挙は、恩返しとして大乗寺客殿の建築の際に、一門の弟子と共に大乗寺の障壁画を描いたそうだ。応挙にとって上人は、忘れられない恩人だったのである。
 香美町香住区森は、大乗寺の門前町として形成された集落で、寺を中心に生活圏が広がっていた。
 「糀屋、紺屋(染物屋)、豆腐屋、畳屋、ろうそく屋、まんじゅう屋、雑貨屋、酒屋などの店が軒を連ね、生活に必要なものは地区内で揃っていました」と区長の中村光男さん。今は商人のまちであった面影はあまり残ってはいないが、古い佇まいの商家はいくつか見ることができる。その家屋の漆喰の壁には黒い塗料が塗られていた。これは戦時中に、敵の飛行機に狙われないよう、目立つ白壁を黒く塗ったものの名残なのだそう。
 また、森地区は老舗の造り酒屋「香住鶴」と調味料メーカー「トキワ」の創業の地でもある。河川の伏流水や湧き水を使う醸造業は、良い水が湧き出る場所に多く、矢田川に直角に囲まれた森は最適の地であった。
 「子どもの頃は樽でかくれんぼをしたり、テレビでヒーローものを見させてもらったりと、みんなで気軽に香住鶴さんへ遊びに行っていましたね」と案内役の前田精一さんは話す。
 斬られ役で有名な俳優の福本清三氏も森出身だ。彼もこの地をかけ回って遊んでいたそうだ。
 集落を貫く旧県道4号線を歩いていると、道沿いの用水路に設置されたいくつもの階段の存在に気がつく。
 「これは“川いと”へとつながる階段です。それぞれの家から階段が出ていて、洗濯や野菜を洗う洗い場でした。うなぎや鯉、イス(ウグイ)をとり、夏には水路で泳いで遊んでいました」と前田さん。川いとは地域住民の交流の場であったそうだ。
 大乗寺の裏山へと続く細い道に入る。ここは昔の街道で、周りには麻畑が広がっていたが、昭和30年代になり麻は梨の栽培へと変わった。矢田川に沿って集落を形成する以前には、このあたりにいくつかの住居があったとされており、森地区の起源となった場所なのではと考えられている。
 また、寺の裏山斜面は今は墓地となっているが、明治時代の地図には芝居堂があったと記されている。
 大乗寺へと歩を進めると、案内役のみなさんの思い出話がどっと花開いた。
「大乗寺の山門は城壁のような珍しい造りでしょう?子どもの頃は登って遊んでいました。7月にある観音祭りは境内に夜店が出ていて、とても賑やかだったのを覚えています」。
「山門前で野球をしていて、中に入ればホームラン!とか、ありましたね」。
「境内の大きな椎の木。台風の後は椎の実を取りによく来ていたなぁ」。
 今では貴重な文化財となっている大乗寺だが、森地区の子どもたちの遊び場として、住民たちの憩いの場として、人々を温かく見守ってきた歴史を垣間見ることができた。

趣のあるの住居

こじんまりとした閑静な住宅地の中に、このような趣のある佇まいの住居がふいに顔を覗かせる。黒く塗られた白壁は戦時中の名残り。たくさんあった商店の面影は見られないが、豆腐屋を営んでいた案内役の久保義久さんは「畑でとれた大豆をもらい、作った豆腐を物々交換していましたね」と思い出話を語る。

川いとの存在感が印象的な森の集落

子どもたちが泳いだり、大人は井戸端会議をしたりと、地域住民のコミュニティの場であった。

城の石垣のような大乗寺の山門

一門の弟子と共に描いた障壁画164面(一部はデジタル再製画を展示)と書簡1巻は、すべて国の重要文化財に指定されている。

才(塞)の神

足の神様を祀っているため、靴が供えられている。祠の場所に生えている椿の木は大きく、子どもたちの遊び場となっていた。

吉野神社

吉野神社の三番叟は町の無形民俗文化財に指定されており、10月第1日曜の秋の例祭では森区会館の前にて三番叟が奉納される。

大きな看板を目じるしに森の集落へと入る。

森地区の木を訪ねて

写真左から「阿弥陀堂のタモの木」、「大乗寺のクスノキ」、「森の柿の木」。森の柿の木からとれた柿で作った干し柿を取材中にいただいた。柿の甘みが疲れた体に染みてほっこりうれしい気持ちに♪