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清水から蛤!?<新温泉町丹土>(Vol.123/2023年3月発行)

山あいの峠を越えると、そこはまるで別世界!
すり鉢上の盆地に広がるのどかな田園風景と
清水が湧く丹土を歩く。

※この記事は現在準備中です。

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清水から蛤!?<新温泉町丹土>

  国道9号から山陰の名湯・湯村温泉に入り、県道を南へ約2キロほど上るとそこはまるで別世界。急峻な峠道を抜けた先には、標高350メートル、盆地状に広がる照来高原の美しい田園風景が迎えてくれる。
 四方を愛宕山(あたごやま)や草太山(くさぶとやま)などの山々に囲まれ、すり鉢のような地形から照来(てらぎ)盆地とも呼ばれている。
 照来盆地は、今から300万年前にできた照来カルデラの内側に堆積した泥や砂などでできた地質のため、地すべり地帯として知られる。地すべりによる緩斜面は棚田として利用されており、古くから稲作を中心に人々の営みが行われてきた。
 盆地の中央に位置する丹土(たんど)地区は、明治の町村制により7つの村が合併してできた照来村の役場が一時置かれ、当時は中心だった地区。
 照来スキー場がかつてあったことから最盛期には民宿が10軒ほどあり、現在も但馬牧場公園やスキー場の入り口にあたり、観光業も盛んである。
 名和牛・但馬牛のふる里としても有名で、田畑の耕作のために但馬牛は必要不可欠であった。昔はどの家にも玄関の横に牛の飼育スペースである厩(まや)があり、ひとつ屋根の下で人と牛が寝泊りしていたそうだ。
 公民館を起点に、区長の杉岡富之さんと一緒に集落を裏路地探険。
 まず案内いただいたのが、村のシンボルとなっている「丹土清水」。上水として使用されていたことから、人々が集まる憩いの場であった。
   「この清水には蛤(はまぐり)の面白い話が伝わっています。ここには直径約5ミリの蛤に似た白い二枚貝がいました。しかし、淡水に蛤はおかしいと、大正時代に京都大学の上治博士に鑑定を依頼したところ、マメシジミだと分かり、博士の名を取ってウエジマメシジミと命名されました」と語る杉岡区長。
 本来海にいるはずの蛤がいたことから、照来の七不思議として語り継がれてきたそうだ。
「太古の火山活動の名残からか、地区内には清水があちこちで湧き出ています。イモリが生息するきれいな水は集落の自慢ですね」と、杉岡区長は話す。

丹土清水を後にして坂道を上っていくと、「萬福寺の鐘楼跡」にたどり着く。その昔この場所には、九尺四方の鐘楼が建っており、大きな梵鐘が吊り下げられていた。この前を通り過ぎる人が、時間に関係なく鳴らすので、「丹土の阿呆鐘」といわれて親しまれていたそうだ。
 今は礎石のみが残るが、集落を見渡せる高台に位置するこの場所に立てば、鐘を鳴らしてみたくなるのも分かる気がする。
 ここからさらに山側に入っていくと、氏神である熊野神社が佇む。境内には杉やイチョウなどの巨木が立ち並び、荘厳な社叢を創り出す。平安時代に建立されたと伝わり、八幡神社も合祀されていることから、社殿には刀のオブジェも飾られている。
 神社のすぐ隣には「本覚寺薬師堂」があり、本尊は立派なもので、両脇の仁王像とともに古の雰囲気を今に伝えている。
 神社から坂道を下って集落内に入ると、梁の立派なしっかりした家々が目に留まる。冬場は但馬でも雪の多い豪雪地域であり、頑丈さをもつ石州瓦の赤茶色の屋根と相まって、雪国特有の景観を醸し出している。
「子どもの頃は大雪で2階から出入りすることもありました。冬は杜氏、蔵人として、酒造りの出稼ぎに行く人が多かったですね」と、杉岡区長は話してくれた。

お盆には、県無形民俗文化財である「丹土はねそ踊」が、公民館前で踊られる。剣術を元にして歌舞伎の音曲を取り入れた踊りは俊敏で、但馬でも珍しい民俗芸能。毎夏の恒例行事であり、最後の踊りでは帰省客も飛び入り参加して、それぞれが自由に仮装して盛り上がるそうだ。
 「丹土を見渡すなら草太山の中腹から眺めるのが一番。かつてカルデラ湖だった照来盆地の美しい田園風景と山々をぜひ見て欲しい」と、最後に区長は教えてくれた。
 これからは新緑の香る季節。爽やかな高原の風に吹かれて、のんびりと訪れてみたい。

 

丹土はねそ踊

戦国時代、豪族が我が家、我が身を守るため、家の子郎党に剣術を教えたことに由来する。2人、あるいは3人1組となって踊りを披露し、槍・懐刀・刀・なぎなたを手にして、太鼓とお囃子にあわせて演ずる。

丹土清水

集落の中央に位置する「丹土清水」。今でもきれいな湧水が流れ出ている。かつては生活用水として利用され、住民のコミュニティの場であった。洗い場(左)もあり、洗い物や洗濯も行われていたという。現在は主に防火用水として使用されている。

本覚寺薬師堂

本覚寺薬師堂の趣のあるご本尊。現在の薬師堂は湯村温泉にある正福寺から移築されたもの。

熊野神社

集落の氏神である熊野神社。丹土では10組にまとめられ、毎日当番が旗を持ってお参りする日参が今でも行われている。昔は大きな旗を担いでお参りしていたが、現在は小さな旗へと変わっている。

奉納されるしめ飾り

熊野神社には、12月31日にしめ飾りを神社に奉納する独特の慣習が残っている。

丹土のまちなみ

豪雪地帯ということもあり、梁や柱がしっかりした家が多い。石州瓦の赤茶色の屋根が山陰の雪国の雰囲気を醸し出している。

草太山からの眺め

区長さんおすすめの草太山からの眺め。中央に見えるのが愛宕山と但馬牧場公園で、そのすそ野に丹土地区が広がる。
照来盆地の美しい風景が見渡せ、地形の成り立ちがひと目で分かる。

漆喰の五重塔

集落で見つけた元左官職人のご主人が趣味で作った漆喰の五重塔が並ぶ庭。表札も漆喰で作られている。