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湯けむりたちのぼる町<新温泉町湯>(Vol.31/1998年3月発行)

1150年以上沸き続ける98度の熱泉
いにしえから人々の心と体を癒してきた
温泉の御利益に手を合わせる

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湯けむりたちのぼる町<新温泉町湯>

 嘉祥元年(848年)天台宗第二世の座主、慈覚大師により開かれたと伝えられる湯村温泉。1150年以上にわたって湧き続ける98度の熱泉は、1分間に470リットルと豊かな湯量を誇り、いにしえから多くの人々の体と心を癒してきた。泉質はナトリウム、炭酸水素塩・塩化物硫酸塩泉(低張性・中性・高温泉)。神経・筋肉痛、五十肩、うちみ、冷え性などに効能があり、服用すれば胃腸病に良いとされている。
 夢千代日記の舞台ともなり、現在、年間約80万人が訪れる観光温泉地、熱泉が湧き出る荒湯付近は、絶えず観光客で賑わう。
 しかし、昔は東に春来峠、西に蒲生峠と険しい山に阻まれた谷間の温泉郷。人々は、険しい峠を越えこの町へ湯治に訪れた。病回復の祈願と温泉の治癒力に感謝し、神仏に手をあわせてきた姿を今も町並みに見ることができる。
 八幡神社から国道9号線を横切り、薬師堂の参道を下って、鳥の奥川沿いの路地から春来川、さらに川を渡り、大師堂、清正公園へと、谷をVの字に歩くだけでもいくつも手を合わせるポイントがある。きれいに煉瓦で整備され、土産物屋が並ぶ通りや、荒湯の賑わいとは、また異なった表情を見せる。
 「平らな土地があれば、田んぼにした」といわれるくらい、緩やかな斜面には、ぎっしりと民家や温泉旅館が建ち並び、どの路地も狭く入り組んでいる。不思議な視点でいえば、建物と建物の隙間は、傾斜面の段差に家がうまく建っているさまを見るようで興味深いものがある。
 さらに、寒く冷え込んだ朝は、あちらこちらの路地から温泉のかすかな匂いと共に白い湯けむりがたちのぼる。理由は、約500戸の一般家庭や温泉旅館に配湯されている温泉によるもの。
 狭い山間の斜面に立ちのぼる湯けむりの行方をたどるのもまた面白い。
※記事の内容は1998年3月掲載当時のものです。

清正公園から一望した町並み

路地から荒湯へ

狭い路地から望む荒湯のもうもうとした湯けむりは、異色のファンタジーポイント。

大師堂へ向かう橋からの眺め

大師堂へ向かう灯籠のような欄干の穴から

大師堂のおこもり堂

40年間前から書道教室の場としても活用されている。昔なつかしい趣が残されている。