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新川青空市場・公設市場で買物<豊岡市>(Vol.33/1998年11月発行)

「今日は何がおいしい?」
「これはおまけや」
会話で買物を楽しむ

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新川青空市場・公設市場で買物<豊岡市>

 朝早くからにぎわう豊岡の台所、昔ながらのなつかしい風情が残る新川青空市場と公設市場を歩く。午前7時前、青空市場に 大八車や軽トラックが横付けされる。「おはようさん」という声が交わされる中、とれたての野菜や果物、市場からせり落とされたばかりの魚があわただしく積み降ろされる。昭和33年から約40年間変わらない新川青空市場の朝の光景。1坪弱のブースの出店料300円を払えば誰でも出店できる。運営管理は、市内の青空市場近隣の3区がおこなっている。現在、約100名の登録者があり、季節によっては梨や桃などの販売で丹後の方からの出店者もあるが、主に豊岡市近隣の農家さんたちが大半を占める。中には数十年通い続ける人、お姑さんからお嫁さんへと二代にわたって受け継いで出店している人など、すっかり顔馴染みの人たちが多い。期間契約もできるが、場所は早く来た人から順に決まるため、少しでも良い所、限られたブースを確保するために朝は混雑する。
 畑や山でとれた地物、旬の新鮮なものが多く、ぜんまいなどの山菜から菖蒲の花、加工品では干し柿、漬け物、年末になれば、討ち入りそば、自家製のお餅、注連縄 などが並ぶ。 特に年の暮れは、道路にも出店者があふれ、正月準備の人たちでごったがえす。
 生産者から直接購入できるのもこの市場の魅力。気になる値段は交渉次第、「消費税がなくて、おまけがついて来た」と売り手との駆け引きを楽しむ人もいる。売る側も「立派な野菜ね。買っていこうかしら」と誉められれば、作る手応えもある。閉店は正午、午後からは、明日また並べる作物を作るために店終いとなる。
 また、公設市場は青空市場から道を隔てた向こう側にあり、約60メートルの通路の両側に、八百屋・魚屋・花屋・飲食店などが軒を並べる。大正末期から昭和初期頃に整備されたもので、その歴史は古い。奥行きが長いためか、外からは薄暗く見えるが、温かみのある色合いの照明が独特の趣を醸し出している。
 中に入ると狭い通路いっぱいに品物が並ぶ。使い込まれた商品棚、お惣菜を煮る匂い、コロッケを揚げる匂いがする。最近では、シャッターを降ろす店舗が多くなってしまったが、ここも地元ではお馴染みの買物処。「今日は何がおいしい?」と聞けば、快く今日の献立の相談にのってくれる。「ちょっと他に寄って来るから魚をおろしといてもらえる」という会話も聞かれる。
 じっくり歩くとなつかしいものおいしいものに出会えそうだ。
※記事の内容は1998年11月掲載当時のものです。

朝から買い物客でにぎわう青空市場、出店は午前中まで

トレーに入っていないごろごろと並べられた野菜

5つ珠のそろばん

なつかしい看板

作りたてのいい匂いがするお惣菜

目の前でほかほかを揚げてくれる