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但馬の秘境・黒川温泉を歩く<朝来市生野町黒川>(Vol.76/2010年10月発行)

オオサンショウウオが多数生息する清らかな川
山名氏ゆかりの寺や屏風のようにせり立つ巨岩
この秋は不思議がいっぱいの黒川へ出かけよう

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但馬の秘境・黒川温泉を歩く<朝来市生野町黒川>

  瀬戸内海に注ぐ市川の源流、朝来市生野町黒川。地名の由来は郷名考に「黒川は陸奥の白川、下野の黒川の例によれば、その水色の黒きか其地質による」と記され、黒っぽい石の川底から名が付いたのではないかといわれている。
 国道429号沿いを流れる源流部は黒川渓谷と呼ばれ、秋は紅葉の名所である。嵌入蛇行といわれる大きく屈曲した川筋は奇岩が多く、独特の渓谷美をみせる。
 市川には国の特別天然記念物であるオオサンショウウオが多数生息し、旧黒川小中学校を利用した調査・研究施設「NPO法人日本ハンザキ研究所」がある。「ハンザキ」とはかつての標準和名で、口が大きく、体が半分に裂けているように見えることから名が付けられたという。
 研究所ではマイクロチップを挿入して追跡調査を行っている他、環境保全活動施設「あんこうミュージアムセンター」を併設し、パネル展示や観察会など通してオオサンショウウオとそれを取り巻く自然環境の保全・復元に努めている。
 研究所から国道を東へ進むと、屏風のようにそそり立つ巨岩が目に入ってくる。岩の前にはお社が作られ、屏風神社というそうだ。その昔、この地域に疫病が流行ったが、黒川だけは被害がなかったという。以来、この巨岩が盾となって疫病を防いだと信じられ、御神体として祀られた。すぐそばを流れる市川は、逆流しているかのように錯覚する蛇行区間が9つもある不思議な場所でもある。
 ここからさらに奥に進めば、黒川本村にたどり着く。集落内に入ると、奥多々良木発電所の上部ダムである高さ98メートルの黒川ダムがひと際目を引く。
 標高は約500メートルで、夏でも比較的涼しく、昼夜の温度差のある気候から、ジャガイモと黒川大根が特産品となっている。
 村の歴史は古く、創建600年以上の歴史を誇る大明寺は、山名氏ゆかりの寺として数多くの逸話を残す。南北朝時代に建立されたと伝えられる茅葺き屋根の開山堂には、中央に仏像が祀られ、奥には創建者の月庵宗光和尚と和尚の教えを受けた但馬国守護・山名時熈の木造が安置されている。
 秋の紅葉シーズンは、渓谷沿いを中心に見事な風景が広がる。清流がきらめく黒川へ、秋を探しに出かけてみよう。

大明寺・開山堂

但馬守護・山名氏ゆかりの大明寺・開山堂。山名家・足利家の家紋の他、江戸時代は三代将軍・徳川家光より寺領を賜ったことから、葵紋も掲げられている。開基した月庵和尚の自画自賛画像や徳川家代々の御朱印状など貴重な文化財が保管されている。

屏風神社

屏風のようにせり立つ巨大な1枚岩を御神体とする屏風神社。その昔、この岩が疫病の侵入を食い止めたという伝説が同地で伝えられている。周辺の木立では7月中旬頃にヒメボタルの幻想的な光を見ることができる。

オオサンショウウオの飼育

日本ハンザキ研究所では旧黒川小中学校のプールを利用して、河川改修工事の現場などで保護されたオオサンショウウオを一時飼育している。また、赤ちゃんを飼育展示している「ミニ・アクアリウム」やパネル展示のスペースもあり、無料で見学することができる。

坐禅石

元は山中にあったと伝わる坐禅石。くぼみは月庵和尚が日夜修行に励み、坐禅を組んだ跡といわれる。

日吉神社の脇を流れる黒川

黒っぽい川底は、「黒川」の名にふさわしい。夏場はホタルが乱舞する。

月庵和尚と狼の像

大明寺を開基した月庵和尚と狼の像。坐禅石で修行に励んでいた和尚は苦しんでいた老狼と出会う。口の中の魚の骨を抜いてやると、獣の被害がなくなり豊作に恵まれたいう民話が残っている。

黒川温泉

大明寺の花園から湧き出た黒川温泉は、美人の湯として知られている日帰り温泉施設。炭酸水素イオンを大量に含む泉質で、肌がスベスベになるという。お食事処も併設している。