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 昔、香住谷の奥に泡原あわらと言うところがあった。その山に囲まれた集落に「泡原の長者」と呼ばれる三郎太と言う名前の欲張りな男がいた。
 三郎太の一人娘のあやめは親に似ず周りの人々にも優しい子であったので「あわら小町」と呼ばれていた。あやめが18歳になった春、三郎太は北村の家の次男の七郎を婿にいただきたいと申し入れ、欲張りと思えないほどたくさんの結納を贈った。母親は「結納に見合う支度ができないので結婚はお断りします」といったが、三郎太が「扇子に一杯の土を持ってくれば、それでいい」と話すので、七郎はあやめの婿に行くことを承知した。七郎とあやめは夫婦仲もよく楽しい生活を送っていた。
 しかし、1ヶ月ほど経つと、三郎太の意地悪が始まり、新郎が耐えられず実家に戻った。三郎太は、「七郎は勝手に出ていったのでもう帰ってこなくていい。そのかわり約束した扇子に一杯の土をもらわねばならない」と七郎に追い打ちをかけた。扇子一杯の土と言うのは、扇子を広げ、要から見通せる全部のことで、北村の家が持っていた田や畑は全て三郎太にとられてしまった。あやめは夫に去られたうえ、父のひどい仕打ちを知り、どうにかして夫に謝りたい、夫のところへ行きたいと思い、家を抜け出したが、見張りに捕まりそうになり近くの池に身を投げた。そのことを聞いた七郎も、あやめを追って同じ池に身を投げた。
 三郎太は自分のしてきたことを後悔し、巡礼の旅に出て2度と帰ってこなかった。

所在地 香美町香住区
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