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スキー場を活用した但馬牛の放牧(美方高原)

田尻号(小代観光協会提供)

 “世界の舌を魅了する”神戸ビーフや特産松阪牛の素牛『但馬牛たじまうし』。美方みかた郡は但馬牛の原産地として知られ、全国の黒毛和牛の99.9%に血縁を持つとされる名牛「田尻たじり号」のふるさとでもある。1897年(明治30)頃には、全国に先駆けて血統登録の基本となる「牛籍簿(牛籍台帳)」を整備し、郡内産にこだわった和牛改良を行うことで、肉質の優れた地域固有の血統(遺伝的特性)が確立し堅持されてきた。
 また、但馬牛の飼養は、放牧や畦草の利用、堆肥を活用した地域資源循環型農業を発展させ、牛と人と自然が共生するシステムを構築し、草原環境や棚田の維持、イヌワシに代表される希少で多種多様な生物資源を守ることにつながった。
 このような、他の和牛生産地にない独特の“兵庫美方地域の但馬牛システム”の重要性が評価され、2019年(平成31)2月15日に農林水産大臣により「日本農業遺産」に認定された。併せてFAO(国連食糧農業機関)が認定する「世界農業遺産」への申請も承認され、2023年(令和5)6月に国連が現地調査を実施、7月5日には世界農業遺産に認定された。