カテゴリー: # 暮らし # 伝説・昔話 # 香美町 # 村岡エリア
わだのりゅう
香美町村岡区和田のお宮さんのあるところは、昔は一面の大きな池であった。この池の周りは昼でも暗い森で、その中にどうしても通らなければならないひとつの細い道があった。 この池には竜が住んでいるという噂が広がり、ある時、1人の旅人が必死に叫びながらきて、「竜が…」と言い息絶えてしまった。それから村人たちは、池や森に近づくことはなかった。しかし、噂を知らない旅人は同じように死んでいった。 村を通りかかった坊さまがこの話を聞き、旅人の難儀を救ってやろうと考えた。坊さまは村人たちに、3日がかりでたくさんのもぐさをつくらせ、たくさんの針を集め、それを大きなわら人形の腹の中に詰め、池のほとりに立たせた。坊さまはお経を唱え、もぐさに火をつけ姿を消した。池は大きく波立ち、竜の頭が現れ、人形を飲み込んでしまった。間もなく嵐が起こり、風は吹き荒れ、草木もなぎ倒された。ほどなく、嵐が静まった頃、池には10mもあると思われる竜が浮かんでいたが、人の気配を感じ、底深くまで沈んでいった。 その後、竜をみた人はなく、穏やかな日々を楽しんでいたが、村では火事が起き、悪い病気が流行ったりした。人々は竜のたたりで村に災難が続いては困ると考え、竜の怒りを静めようと池のほとりに小さなお宮を建て竜神として祀った。村にはまた、穏やかな日々が帰ってきた。 今は、旧暦の端午たんごの節句に、この池の菖蒲しょうぶで菖蒲綱をつくることが伝わっている。
香美町村岡区和田のお宮さんのあるところは、昔は一面の大きな池であった。この池の周りは昼でも暗い森で、その中にどうしても通らなければならないひとつの細い道があった。
この池には竜が住んでいるという噂が広がり、ある時、1人の旅人が必死に叫びながらきて、「竜が…」と言い息絶えてしまった。それから村人たちは、池や森に近づくことはなかった。しかし、噂を知らない旅人は同じように死んでいった。
村を通りかかった坊さまがこの話を聞き、旅人の難儀を救ってやろうと考えた。坊さまは村人たちに、3日がかりでたくさんのもぐさをつくらせ、たくさんの針を集め、それを大きなわら人形の腹の中に詰め、池のほとりに立たせた。坊さまはお経を唱え、もぐさに火をつけ姿を消した。池は大きく波立ち、竜の頭が現れ、人形を飲み込んでしまった。間もなく嵐が起こり、風は吹き荒れ、草木もなぎ倒された。ほどなく、嵐が静まった頃、池には10mもあると思われる竜が浮かんでいたが、人の気配を感じ、底深くまで沈んでいった。
その後、竜をみた人はなく、穏やかな日々を楽しんでいたが、村では火事が起き、悪い病気が流行ったりした。人々は竜のたたりで村に災難が続いては困ると考え、竜の怒りを静めようと池のほとりに小さなお宮を建て竜神として祀った。村にはまた、穏やかな日々が帰ってきた。
今は、旧暦の端午の節句に、この池の菖蒲で菖蒲綱をつくることが伝わっている。